恋は死なない。



それに何よりも、“花束をもらう”という出来事は、佳音にとってはかなり衝撃的だった。



「そろそろ鉢植えのパンジーが終わりかけじゃない?」


店主からそう声をかけられて、佳音はほのかに微笑んで応える。
確かに店主の言う通り、パンジーがもう玄関を飾る風情ではないことを思い出す。花苗のコーナーに行って、育てやすく安価で可愛い花を見繕って購入する。


「…これ、売れ残りだけど、おまけね」


すると、店主がまだきれいに咲いているベルフラワーを、新聞紙でくるんで渡してくれた。


「あ…、ありがとうございます」


佳音は恐縮しながら、それを受け取った。
こんな時、ちゃんとした大人ならば遠慮するものだろうかとの思いがかすめたが、佳音にはそんなことに気を回せるほどの余裕がなかった。


店主の和やかな笑顔に見送られながら、花屋を後にして、本屋へと向かう。

この本屋も大きな店ではなかったが、近所にあれば何かと便利なところだった。
注文している雑誌を受け取る前に、ファッション雑誌などにウェディング特集などがないか、入念にチェックをする。こうやって、最近のトレンドを押さえておくのも大切な仕事だ。



「……相変わらず、研究熱心なんですね」


雑誌コーナーで横に立った人間から、言葉が発せられる。


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