恋は死なない。
「逆に、あなたがいてくれて、怖いくらいに幸せすぎて……。私がこんなに幸せになっちゃ、いけないんじゃないかって思うの」
和寿は、佳音が苦しそうにつぶやいたことに、息を呑んで絶句した。
独りぼっちで寂しい思いをしてきた佳音を、幸せという真綿で包んであげれば安心してくれると思い込んでいたが、そうではなかったようだ。
驚いたような顔をしている和寿に、佳音は思い切って問いかけてみる。
「あなたは、今、私といて幸せ?」
それは、この前は怖くて和寿にできなかった質問だった。
「そりゃ、もちろん幸せだよ」
しかし、和寿は佳音の思いとは裏腹に、即答した。
思った通りの和寿の返答だったけれども、佳音はこれを聞いてもっと苦しそうに顔を歪めた。自分の中に渦巻いていたものが抑えられなくなって、口を衝いて出てきてしまう。
「でも、あなたは今まで努力して積み上げてきたものをすべてなくしてしまったでしょう?あなたはご両親のことを何にも言ってくれないけど、ご両親だって、こんなことになってきっとがっかりしてる。……それに」
「……ちょ、ちょっと、待って。佳音」
堰を切ったようにこんなことを言い始めた佳音をなだめるように、和寿は腰を浮かせて、テーブルの向かいに座る佳音の手を取った。