恋は死なない。
「あのね、佳音。僕の両親のことだけど」
和寿はじっと佳音を見つめて、その表情が落ち着くのを待った。
「今回のことで、僕も両親から勘当されたんだ」
それを聞いて、佳音が息を呑んで和寿を凝視した。
「……勘当された……?!」
「よっぽど僕に社長になってほしかったんだろうね。『失望した』って言われて、話も聞いてくれなかったよ」
和寿を見つめる佳音の目が、悲しみを帯びる。佳音がその思考の中で、佳音自身を責め始める前に、和寿はそれを遮った。
「でも、誤解しないでほしい。僕の両親が受け入れてくれないことは想定してたし、僕が僕として生きてくためには、僕の方から縁を切るつもりだった」
そう言う和寿の弁解を聞いても、佳音の心に悲しみが染み込んでくる。自分が決めた人生を、親に認めてもらえない哀しさは、佳音が誰よりも知っている。
自分が感じていた溢れそうなほどの幸せの陰で、いくつの悲しみがあったのだろう。
そこに思いが至ると、心が暗く陰ってくる。
和寿へ何も言葉が返せず、佳音は唇を噛みながら、また工房にある幸世のドレスへと目を遣った。
そのとき、来客を告げるカノンのオルゴール音が鳴った。