恋は死なない。
「このドレスよ。私がそのドレスを庭で焼いてしまおうとした時、あなたは血相変えて飛んできて、素手で火を消したでしょ?その時に直感したの。あなたは、このドレスを作った森園さんのことが好きなんだって。……ま、ここに来るたび、あなたは森園さんに見とれてたものね」
「ドレスを焼いて……?」
幸世の話を聞いて、佳音は和寿を振り返って確認したが、和寿は佳音と目が合っても、少し眉を動かして反応しただけだった。
しかし、どうやら前に和寿から聞いていた話よりも、実際はもっと修羅場だったようだ。
「まさかとは思ったけど、いきなり同棲してるとはね。いつの間に、そんなことになってたのかしら」
同棲どころか、二人の間にはすでに新しい命が息づき、入籍も済ましている……なんてとても言い出せず、佳音と和寿は神妙な面持ちで黙り込んでしまう。
そんな二人を見て、幸世は軽く笑いをもらす。
「でも、安心して。森園さんのことは、パパにもママにも言ってないから。二人は、あなたがあの時に説明した通り、『夢』を叶えるために会社を辞めるから、結婚もできなくなったと思ってるわ」
“夢”という言葉を聞いて、また佳音は和寿の表情を窺ったが、今度は佳音の視線に気づかず、和寿は渋い顔のまま幸世を見据えている。
「森園さんは、こんなに可愛いものね。そりゃ、一度好きになったら、諦めきれないわよね……」