恋は死なない。



自分を見つめながら、幸世がしんみりとそう言うのを聞いて、佳音はとてもいたたまれなくなってしまう。


「幸世さん……。私も裏切るようなことをしてしまって、なんて言って、謝ればいいのか……」


佳音はやっとのことで言葉を絞り出し、スカートを両手で握りしめながら、幸世に頭を下げた。
すると、幸世は見たくないものでも見たように、すぐに佳音から目を逸らした。


「私に、謝るようなことなのかな?あなたがどんなにこの人のことを好きになっていたか知らないけど、あなたはきちんとドレスを作って私に納めてくれた。私とこの人がちゃんと愛し合っていれば、あなたの気持ちなんて関係なく、なんの波風もなくとっくに結婚式も終わってたでしょうからね」


幸世が佳音に話をするのを聞いて、和寿がひとつため息をついた。


「君にとって、悪者は僕だよ。君と結婚することは分かってたのに、佳音のことを好きになってしまって……」


幸世は佳音から和寿へと視線を移して、同じようにため息をついた。


「確かにそれは、不実なことよね。でも、私たちは、お互い好きになって結婚しようとしていたわけじゃないわ。私はね、あなたとならば結婚した後も、今まで通り“遊んで”暮らしていけるって打算したの。だから、結婚を決めた後だって、あなたと夫婦になるために、ちゃんと理解しようともしていなかった」


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