恋は死なない。
却って和寿を弁護するような幸世の物言いを聞いても、佳音は納得するどころか、ますます苦しくなった。幸世に対する罪の意識。ずっとそれを抱え続けて、佳音はもう押しつぶされてしまいそうだった。
「……でも幸世さんは、そのドレスを着て、とても幸せそうに笑ってたでしょう……?」
あの輝くような幸世の笑顔は、佳音が和寿といて幸せを感じれば感じるほど、大きな影となって佳音を追いかけてきた。
佳音が泣き出しそうになりながら、そう言ったのを聞いて、幸世はもう一度、自分の理想が具現化したそのドレスを見つめ直した。
「私はね、古川くんのお嫁さんになりたかったわけじゃなくて、ただお姫様になりたかったのよね。自分が思い描いた完璧なお姫様に……」
そう語りながら、幸世は改まって、きちんと佳音の方へ向き直った。
「森園さん。あなたは、そのお姫様になるためのドレスを、完璧に作り上げてくれた。私の想像以上にね。古川くんのこと好きだったんなら、きっと辛かったと思う。だけどあなたは、こんなに素晴らしいドレスを作れた。職人としては、一流よ。依頼主の婚約者を好きになるなんてことは、もう二度と起こりっこないんだから、今回のことを気にすることはないの。もっとどんどん、こんなドレスを作り続けるべきよ」