恋は死なない。



力強い佳音の言葉は、雷のように和寿を打ち付けた。たった一人で夢を実現させた佳音の言葉には、まるで魂が宿っているようだった。

和寿が息を呑んで佳音を見つめ返すと、佳音は真剣な目で和寿に訴えかけた。


「夢を追い求めながら、子どもを育てていくのは大変なことだと思うけど。たとえそれが辛いことでも、自分の夢だったことなら喜びに代えられるでしょう?……私は、あなたがこの街で、ケーキ屋さんを開くのを思い描いてる。はじめは小さいお店でも、街の人から愛されてる素敵なお店にするの。そこにいるあなたは忙しそうにしてるけど、心から幸せそうに笑ってるの」


佳音の懸命に語るのを聞きながら、和寿はじっと佳音を見つめ続けた。けれども、そのとき和寿が見ていたのは、脳裏に浮かび上がってきた佳音の語る未来の映像。そこには佳音も、小さな子どももいて、和寿に笑いかけてくれている……。それが現実になれば、どんなに嬉しいことだろう。


「……僕に、できるかな?自信がないよ」


まだこんなことを言って、しり込みしている和寿に、佳音は背中を押すかのように、にっこりと笑ってみせた。


「あなたは一人じゃないから。あなたの夢は、今は私の夢なの。私は、あなたと一緒に必ず夢を叶えるの。一緒にたくさん努力すれば、たとえ贅沢はできなくても、きっと幸せになれる」



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