恋は死なない。

 三年後……




「和彦さん、急いでください。もう時間が……。遅れちゃう」


大きなワンボックスの車を降りるや否や、真琴が焦って古庄に声をかけた。


「分かってるよ。ほら、円香。抱っこしてあげよう」


古庄は真琴に応えながら、まだ足元がしっかりしない末娘の円香を抱え上げる。それに伴い、上の三人の子どもたちも一目散に走り出した。


「こんな時に限って、車が混んでるし、駐車場も空いてないんだから。……あっ!お祝いは?」


突然、真琴が立ち止まって車の方へと振り向いた。


「お母さん!俺が持ってるよ」


先を走っていた真和が、真琴を振り向いて叫ぶ。十一歳になった真和は体も大きくなり、可愛い花々が寄せ植えされた大きな鉢を抱えてくれていた。真琴はホッとして走り始めたが、しばらくしてまた立ち止まる。


「ああ、和彦さん。そっちは前の工房があった方で、新しいお店はこっちです」


「そっか。おい、そっちじゃないらしいぞ。こっちだ」


古庄の一声で、一緒に走っていた子どもたちもきびすを返して、再び走り始める。
そして、そこからすぐに、『新しいお店』が見えてきた。


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