恋は死なない。
「…あら?森園さんがあんまり可愛いもんだから、見とれちゃってるの?」
幸世が自分のフィアンセの不自然な反応に、すかさずツッコミを入れると、和寿は顔をほのかに赤くして、焦りを隠すように幸世をたしなめた。
「こ、こら。初対面なのにそんなこと言っちゃ、森園さんに失礼じゃないか」
この和寿の言動に、幸世はますます面白そうに声を立てて笑った。
「だって、本当のことよ?森園さん。ご自分がこのドレスを着て花嫁さんになった方がいいくらい、本当に可愛いもの」
屈託なく笑いながらそう言ってのけるところを見ると、別にやきもちを焼いているわけではないようだ。
この幸世の笑い声で、その場が一瞬にして楽しく明るいものになる。その明るい性格が現れたような晴れやかな美人、幸世はそういう感じの人だった。
早速、ドレスを作るための打ち合わせに入る。
応接を兼ねているダイニングのテーブルに、佳音は幸世と和寿と向かい合って着いて、白い紙を数枚手元に重ねて置いた。
「この紙に何も描いていないように、何もないところから渡瀬様のお好みの、渡瀬様のためだけのドレスを、一から作り上げていきます」
「ステキ…!ワクワクするっ!!」
幸世がいっそう顔を輝かせて、身を乗り出した。