恋は死なない。
「どうぞ、お構いなく」
和寿はそう声をかけてくれたが、和寿への気遣いというよりも、こうやって二人きりになってしまって、何かして動いていないと落ち着かないからだった。
佳音にとっていつもは居心地のいい自分の場所であるこの工房も、よその家に来てしまったような違和感だった。
和寿に紅茶を出しても、佳音は同じテーブルに着くことはなく、再びパターンの修正作業に取り掛かった。
和寿はダイニングから、その作業を眺めている。
その視線が気になりつつも、佳音は作業に集中することに努めた。和寿も佳音の仕事の邪魔にならないように、無駄な口は利かず、黙ってこちらを見ているだけだ。
けれども、和寿がいるといういつもと違う環境は、佳音に多大な緊張を強いた。あまりの緊張で、集中が阻害される。特に、このパターン作成は間違いが許されない重要な作業だというのに。
そもそも、和寿はどうしてここにいるのだろう?進捗状況を知りたいのなら、幸世から聞けば、ここに来る必要などないはずだ。
そんなことを考えてしまうと、佳音の手はついつい止まりがちになる。それどころか、何度も同じ間違いをして、何度も同じ線を引き直した。
「…今は?これはどのような工程なのですか?」