恋は死なない。
工房の中に招き入れられて、ガーデニングで汚れた手を洗い、ダイニングへと行ってみる。
和寿が用意してくれた食事は、アサリを使ったボンゴレビアンコに、野菜のたっぷり入ったミネストローネ。それら二人分の料理が、向かい合ってきちんとセッティングされていた。
…といっても、一人暮らしで友達に尋ねて来られることもない佳音は、揃いの食器など持ち合わせておらず、同じ料理なのに、それぞれちぐはぐの皿に盛られている。
「すみません。食器やカトラリーを、勝手に探させてもらいました」
和寿がそう言うのを聞くにつけても、ずいぶん苦心したことが窺えた。
「…こちらこそ、すみません。ろくな食器がなくて…」
佳音は本当に恥ずかしくなって、消え入りたいような気持ちになる。
「いいえ、こういうのも面白くていいです。簡単なものしか作れませんでしたが、さあ、温かいうちに食べましょう」
和寿はダイニングの椅子を引いて、まるで自分の家のように佳音を促してくれる。佳音はお客さんのようにそこに座ろうとしたのだが、食卓を見てあることを思い付いた。
「…あの、ちょっと…。…あ、古川さんはどうぞ、お先に食べててください」
佳音はパタパタと、お風呂場とキッチンとを走りまわって何やらしている。和寿はダイニングの椅子に座ってそれを眺め、先に食べ始めることなく佳音を待っている。