恋は死なない。
「それでは、絵でもキーワードでも何でも結構ですので、自由に書いてみたりお話してみてください」
それから、幸世は自分の作ってほしいウェディングドレスについて、あれこれ話し始めた。けれども、話の内容はあっちに飛びこっちに飛び、どうやらまだ自分の中に「これ」という具体的な像は結ばれていないようだ。
そんな取り留めもないような幸世の話を、佳音は一つ一つ聞き取り、手元の用紙に書き留めていく。そんな中で、時折質問をして、幸世のインスピレーションの手助けをした。
そして、新しい紙の上に、鉛筆で人体のヌードポーズの画を簡単に描き、幸世に差し出す。
「だいたいのイメージが固まってきたようですから、この画の上にドレスを着せてみてください」
「…えっ?!私が描くの?」
幸世は目を丸くして、佳音を見つめ返す。
「はい。難しく考えないでください。子どもの頃のお絵かきで、ドレスを着たお姫様を描きませんでしたか?そんな感じで大丈夫です。素敵なドレスを着せてあげて下さい」
そう言いながら、佳音は席を立ってテーブルを離れる。
この作業を佳音がじっと見つめていては、花嫁は気後れして、なかなか鉛筆を動かしてくれないからだ。
幸世がテーブルに向かって真剣な顔で取り組み始めたのを確認して、佳音はキッチンへ向かい紅茶を淹れはじめた。