恋は死なない。
「…森園さんが?信じられないな…」
今の佳音を見る限り、控えめな印象こそあれ、困らせるほど相手に激情をぶつけるなんて想像できなかった。
「まだ子どもでしたから、想いばかりが先走ってたんですよね。そうやって迷惑をかけていただけじゃなく、不登校だったり問題行動も起こしていた私を、先生は見捨てたりはせずにずっと守ってくれました」
「不登校や、問題行動って……、森園さんが……?」
そんな過去があるなんて、今目の前にいる佳音からはなおさら想像もつかないし、和寿の感覚からすると信じられないのだろう。眉間に皺を寄せ、心配そうな面持ちで、問い直された。
佳音は少し躊躇した。これ以上この人に、自分をさらけ出してしまってもいいのだろうかと。
でも、まっすぐな視線をくれている和寿の目を見て、
――この人ならば、受け止めてくれる……。
そんな思いが無意識に働いた。
「…高校2年生のこの年、小学生だった私の弟が…交通事故で亡くなりました……」
思い切って佳音が口を開くと、その事実は和寿にとって相当に衝撃だったのだろう。ハッと息を呑んで、いっそう食い入るように佳音を見つめた。