恋は死なない。



「好きなことをしているわけですから、頑張るとかそういうこと以前に楽しいですし、これができるだけで嬉しいんです。…でも、高校を出て、一度は大学に行ったんですけど、その時は苦しかったですね…」


「あ…、大学にも?どこか服飾関係の大学に行かれたんですか?」


佳音の意外な過去をまた発見して、和寿が興味を示す。


「いいえ、K大学の英文科に…」


「え…っ?!K大学?」


和寿が反応したので、佳音も和寿に目を合わせた。


「古川さんもK大学出身なんですか?」


「いえ、僕はK大学を受験したんですが、合格できなかったんです…」


恥ずかしそうに和寿がそう告白しても、佳音はそれをフォローできるほど気を回せず、


「森園さんは、不登校だった経験があってもK大に合格できるんですから、ずいぶん優秀だったんですね」


と、逆に和寿の方から持ち上げられた。


確かに、特に学習塾に行くこともなく、不登校のブランクもいつの間にか感じなくなり、K大学に合格できた。勉強はできたのかもしれないが、それは人間としてあまり役に立つことではなかった。


「…でも、私は大学に馴染めなくて…。友達もできなかったし、周りに薦められて入ったということもあって、英語に興味がないというより、この仕事への夢が捨てられなくて…。1年も経たずに大学を辞めてしまいました」



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