恋は死なない。
「…それでも、せっかくK大に入ったのに…周りの人に反対はされませんでしたか?」
和寿の指摘は当然だった。普通の人間の感覚では、いわゆる難関大学といわれる大学を中退してしまうなんて、「もったいない」と思ってしまうのだろう。
…佳音の母親は、そんな極めて普通の感覚を示しただけだった…。
「……母親からは、ものすごく反対されました。それでも、私は母の意見を無視して、大学を辞めました。……それから、母からは勘当されてしまって。私は家を出て、今でも母とは絶縁状態です」
「それから生活はどうしたんですか?働きながら専門学校に通われたんですか?」
普通ではない佳音の生き様が気になるようで、和寿は身を乗り出すように質問を投げかける。
そんな和寿に佳音は寂しい笑顔を見せて、先を続けた。
「古川さんがご心配なさってるように、私は路頭に迷ってしまいました。そんな私を助けてくれたのも、この写真の古庄先生です。先生は私の父親を探して、連絡を取ってくれました。それで、父親の方が専門学校に行かせてくれたんです」
「それじゃ、お父さんとは今も行き来があるんですね?」
納得したように頷いてから、和寿は確認する。
その問いにも、佳音はいっそう寂しそうに笑って首を横に振った。