恋は死なない。
ウエストのところに、ドレスと同じ布で作った大きなバラの花を取り付ける。花の位置やバランスを考えながら慎重に……。
大事な作業が終わってホッと息をついて顔を上げ、幸世の方の様子を窺ってみると、また和寿と目が合った。
和寿はきまり悪そうに目を逸らすと、再び幸世の画に視線を落とした。
どうやら、幸世の“お絵かき”よりも、佳音の作業の方が気になるようだ。
そもそもウェディングドレスを制作しているところなんて、和寿に限らず男性には珍しいことなのだろう。
和寿は、スラリと長身の清涼感のある好青年だった。身だしなみもきちんとしていて、堅い仕事をしていることが見て取れる。整った目鼻立ちは、優しげな表情でいつも保たれ、人柄も極めて温厚そうだった。
こんな和寿に想われて結婚するのだから、幸世は今とても大きな幸せに浸れているのだろう。
デザイン画を描きながら見せるその表情は、明るく輝くようで一点の曇りもなかった。
「……ちょっと、確認しておきたいんだけど。さっき、費用のこと、話した?」
幸世が画の仕上げにかかろうかという頃、頬杖をついてただ待つだけだった和寿が初めて口を出した。
それを聞いた幸世は手を止めて、この日初めて曇りのある顔を見せて、それを和寿へと向けた。