恋は死なない。
僕の彼女?!
その日、佳音は和寿の訪れを待っていたが、工房を閉める時間になっても和寿は姿を見せなかった。さすがに工房が開いていないと、和寿も来にくくなってしまうだろう。
夕食を済まし、片づけも済んだ後、冷蔵庫の中に残されたケーキの箱を見て、佳音はため息をついた。
でも、明日は…。もしかして明日、和寿が来るかもしれない。
佳音は、明日までケーキを残しておこうと思った。消費期限も過ぎて、美味しくなくなってしまうかもしれないが、一人で食べるのは寂しすぎた。
するとその時、玄関のチャイムが鳴る。時計を見ると、もう9時になろうとしている。
――こんな時間に誰……?
とっさに思いついたのは、ジャケットを忘れていった和寿だった。佳音は玄関へと急ぎ、すぐさま解錠して、頬を上気させてドアを開けた。
「やあ!佳音ちゃん」
そう声をかけられて、佳音は立ちすくんだ。
ドアの外に立っていたのは、惣菜屋の息子の謙次だった。
「今日はドアを開けてくれて、嬉しいよ。これ、ワイン持ってきたから一緒に飲まない?」
謙次は浅黒く肉付きのいい顔でニッと笑ったが、途端に佳音の顔は険しくなる。初めからこの男だと分かっていたら、ドアを開けたりなんてしなかった。
「……お気持ちは嬉しいんですが、お酒は飲めないんです」