恋は死なない。
「あの…!私の夢は……」
気づけば、佳音の口は勝手にそう動いていた。和寿は表情を緩めて、佳音と視線を合わせてくれた。
「私は、昔は夢なんかなかったんです。私は何のために生きているのか分からない、ただの人形のような人間でした。……だけど、高校生の時に先生のウェディングドレスを作って……。私の中に夢という明かりが灯りました。でも、どうせ叶うはずがないって、最初はあきらめて流されるまま生きていました」
「……だけど、その夢をあきらめきれずに、大学を辞めて……それから努力をして、この工房を立ち上げた。立派に夢を実現しましたね」
和寿は優しい声でそう言って、穏やかに笑ってくれた。
その笑顔を見て、佳音は一筋の光を見たような気にさえなった。佳音は少し息を抜いて肩をすくめ、言葉を続ける。
「夢が実現できても、今の生活はやっぱり苦しいですし、それを続けていくことも大変なことです。でも、夢にしていた好きなことだから、大変でも苦労をしても続けていけるんです」
佳音の言葉に聞き入って、和寿はしみじみと頷く。それから、自分の内面と向い合っているのか、和寿は黙り込んでしまう。
やはり愁いを含んだような表情に戻ってしまう和寿に、佳音は思い切って投げかけてみた。