恋は死なない。
「すみません。お皿借ります」
と、かつて知ったるキッチンの戸棚から、皿を2枚とフォークを2本取り出した。
佳音がお茶を淹れるどころか、帰って来て落ち着くのも待たずに、和寿はダイニングのテーブルの上にケーキの載った皿を差し出した。
「どうぞ、食べてみてください」
佳音の前に置かれたケーキは、この前のような技巧が凝らされたものではなく、シンプルなチョコレートケーキだった。促されるままに、佳音はそのケーキをひと口食べてみる。
噛んで、飲みこんで…。それから佳音の顔つきが覚醒する。何も言わないうちに、確かめるように再びケーキを口に運んだ。
「これ……、美味しいです!すごく深い味で、この前いただいたケーキよりずっと……!」
そのケーキの味に、佳音はすっかり驚いてしまい、思わず思ったままをつぶやいていた。
佳音の様子をじっと窺っていた和寿は、その言葉を聞いて誇らしいような恥ずかしいような、何ともいえない笑顔を見せた。
「そのケーキ……。実は僕が作ったものなんです」
「え……!!」
和寿の告げた事実は、佳音の驚きをもっと色濃いものにした。驚いたまま言葉もなく見つめてくれている佳音に、和寿は言葉を続けた。