恋は死なない。
そう言い放つ幸世に、和寿はビックリしたように眉間に皺を寄せた。
「そんなこと言って、本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。パパに頼めば、少しのお金くらい出してくれるわ」
和寿の気がかりなど物ともせず、ニッコリと笑って見せる幸世に、和寿も呆気にとられる。
「……確かに、副社長は娘には甘いからな……」
「そう。パパも娘の幸せには妥協はしないの。だから、あなたもパパに見込まれたのよ」
こんな二人の何気ない会話の中から、色んなことが分かってくる。
副社長がいるとなれば、小さな会社ではないはずだ。幸世は大きな会社の副社長の娘で、溺愛され、何不自由なく贅沢に育てられてきた。
そして、和寿はその会社の社員で、副社長に見込まれて幸世と結婚することになった。下世話な言い方をすれば、「逆玉」というやつだ。
けれども、こうやって花嫁のドレスを作りに二人で来るところを見ても、その睦まじさが窺える。
…既に、和寿が幸世の尻に敷かれている感は、否めなかったが…。
この工房に来るカップルの中でも、いつになく幸せなカップルに出会えた佳音は、息を抜き微笑みながら、
――今回のドレスは大作になりそう……。
と、心の中で喜びをつぶやいた。