恋は死なない。
マネキンに着せられているウェディングドレスを扱わず、そんなことを始めた佳音を、和寿は驚いたような目で見ている。
そして、スリッパを脱いだ佳音が作業台の上に上がったのを見て、和寿はようやく状況を察した。
「電球を取り換えるんですか?そんなことは、僕がやりますよ」
「いいえ。お客さんに、こんなことをやってもらうわけにはいきません」
席を立って作業台の横にまで歩み寄った和寿に、佳音は首を横に振った。ぐらぐらして座りの悪いスツールの上に上がろうとする佳音を、和寿は心配そうに側で見守っている。
「それじゃ、古川さんに古い電球を渡すので、私に新しいものを渡してください」
「…分かりました」
和寿はそう答えながら、電球をはずしにかかる佳音の足元がぐらつかないように、スツールを両手で押さえていた。
はずされた電球が和寿の方へ差し出される。それを受け取ろうと和寿がスツールから手を離した途端、佳音の身体が揺れ手元が狂う。
「……あっ!」
和寿に渡されるはずだった電球が宙を舞い、佳音はそれを落とすまいと腕を伸ばした。
「あっ、あぶな……っ!!」
和寿は言葉を途切れさせながら、体勢を崩して落ちてくる佳音の下へと回り込んだ。