恋は死なない。
ガシャ――ン!!
電球が床に落ちて割れる激しい音とともに、和寿は仰向けに倒れながら、佳音をその胸に抱き留めた。
和寿の背中が床とぶつかる激しい衝撃が、和寿の身体越しに佳音へも伝わってくる。
間髪入れずに、スツールが作業台の上で転がっている気配を察して、和寿が思わず身を縮めて、佳音を守るようにその腕の中にギュッと抱きしめた瞬間、それは和寿の背後に落ちてきた。
一連の衝撃によって荒くなった息が治まる間、薄暗い工房の中で、二人は横たわったまま動けなかった
雨音だけが響く静けさの中、佳音の耳に和寿の心臓の音が聞こえてくる…。
しかし、佳音の胸の鼓動は落ち着くどころではなく、次第にこの出来事の衝撃よりも和寿の腕の中にいることを意識して激しくなっていく。
「……す、すみません。も、もう大丈夫です。ありがとうございます」
動揺しながらも佳音はやっとのことで、和寿の懐からそう言葉を絞り出した。そして、和寿の胸に手をついてその抱擁から抜け出そうとする。
するとその時、佳音を引き留めるように和寿の腕に力がこもり、佳音の顔は和寿の胸に押し付けられた。
「……僕の方こそ……」
耳元で囁かれたその声の深さに、佳音の肌が粟立ち震えが走った。抱きしめられていることを感じ取って、全身は硬直するのとは裏腹に、息遣いだけが大きくなる。