恋は死なない。
それでも、幸世がいなければ、自分が幸世のウェディングドレスを作っていなければ、和寿とも出会えなかった。
運命のいたずらに翻弄されて、どんなに今の心が苦しかろうと、こんなにも恋しい和寿との出会いは否定したくない。自分の中から和寿がいなくなることを思うと、佳音は切なさで胸が張り裂けそうになる。
夜の街に落ちる雨を見つめながら、いつの間にか佳音の頬にも涙がこぼれていた。しとしとと降り続くこの雨のように、佳音の涙もなかなか止みそうになかった。
梅雨の晴れ間の、太陽のまぶしい日の午後、幸世のウェディングドレスの二度目の試着が行われた。
「こんにちは――!」
いつものように、はつらつとした声が響いて、この日の太陽のような笑顔の幸世が、工房のドアを開けて入ってきた。
不思議なことに、この幸世の明るさは佳音の辛く切なく、暗い心情も忘れさせてくれる。
出来上がった仮縫いを幸世に見てもらい、その喜ぶ様を思い描くだけで、佳音の心はうれしさで満たされる。
自分の作り出したものが、ほかの誰かの喜びにつながっている……。それは佳音にとってこの上ない喜びでもあり、この仕事を続けていける原動力でもあった。
「いらっしゃいませ。こんにちは」
待ち構えていたように佳音も玄関に出て、幸世を迎え入れる。