恋は死なない。
花屋での出会い
それから何度か、幸世の方は佳音の工房へと足を運んでデザインや生地や素材のこと、ヴェールやグローブなどの小物のことなどを決めていった。
そして、一番重要な採寸。これは本番さながらにビスチェやパニエ、シューズなどを準備して入念に行われた。
その他料金のことや、細々とした決め事はメールや電話でやり取りをして、一つ一つ幸世の了承を得てから、ドレス作りは行われる。
100%オーダーメードを謳っているだけあって、その辺りは細心の注意が払われる。
花嫁さんに「まぁ、いいか」と思われて、譲歩されたり妥協されたりすることだけは、佳音の意識の中にはあり得なかった。
あまりにも執拗な確認に、時には花嫁さん自身から面倒くさがられたりすることもあったが、幸世に関しては本人もこだわりが強いらしく、一つ一つに対して真剣に考えてくれた。
幸世の体型に合わせてパターンを引き、最初の打ち合わせから1カ月が経過した頃、いよいよ本格的にドレス作りが始められる。
といっても、まだ幸世の決めた生地は使わない。パターンの調整のため、まず仮縫い用の生地を使って一通りドレスを作りあげていくのだ。
一旦、制作作業を始めると時間を忘れる。
食事をすることも忘れて没頭することもあり、この日も気づいたらとっぷり日が暮れていて、時計を見たら既に7時を過ぎていた。