恋は死なない。
ダイニングにいる和寿から作業の様子を見つめられていることは、いつもと変わらなかったが、今日の佳音には多大な緊張を強いた。佳音はただ、目の前のドレスだけを見つめ、仕事に集中することに徹した。
「デコルテや、バストの周りはいかがですか?ラインの出方のおかしいところや、着心地がしっくりこないところがありましたら、おっしゃってください」
佳音に問いかけられて、幸世は姿見に映る自分の姿をまじまじと見つめなおす。同時に、佳音も幸世と向かい合うように立ったり、近づいてひざまずいたりして、細かい不具合も逃すまいと厳しい目でドレスをチェックする。
「……私、肩が厳つくてイヤになっちゃう。せっかくのドレスも、なんだか想像と違って見えちゃうわ」
幸世がそう口を開いたのを聞いて、ひざまづいて幸世を見上げる佳音の表情が曇った。
「……作り直しますか……?」
そうは言っても、幸世の想像通りのものということになれば、デザインを変える必要が出てくる。そこからやり直すことになれば、またパースを引きなおして仮縫いをする作業を繰り返さなけらばならない。費用の面もさることながら、結婚式までに間に合うかどうか、佳音は不安になった。