恋は死なない。



「いいえ。マネキンが着ていたものは、想像通りだと思ったのよ?私が自分の体つきを考えずに、ただ理想に走ったのがいけなかったんだわ。でも着たかったドレスだから、これでいいの」


これを聞いて、佳音はハッとした。そういうことはデザインを考える段階で、きちんとアドバイスするべきだったと、気がついた。

依頼主が「思い描いた理想のドレス」を作ることばかりに、囚われてしまっていた。客観的に似合うものを提案して、依頼主の理想と擦り合わせていかなければ最終的な満足にはつながらない。

そんなことを思いながら、申し訳なさそうにしている佳音に対して、幸世はいつものように笑って見せた。


「大丈夫。森園さんのせいじゃないわ。この肩がこんなに厳ついのがいけないの。やっぱり、テニスをやってたせいかしら?」


「テニスをなさってたんですか?」


佳音は幸世に仮のブーケを持たせて、腕の見え方などを確認しながら、気を取り直して合いの手を打った。


「そう、けっこう本格的にね。大学の時にはインカレにも行ったのよ。古川くんも高校時代にやってたらしいけど、私、古川くんだって負かしちゃったんだから!ねえ?古川くん?」


と、背後のダイニングにいて姿見の鏡に映りこんでいる和寿に、幸世は声をかけた



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