恋は死なない。
幸世は悪びれずに小さく舌を出して謝ると、椅子から立ち上がった。和寿は相変わらず忙しい幸世に呆れて、諦めのため息をつき、幸世はそんな和寿に振り返って笑いかける。
「あなたも一緒に来る?」
幸世と目が合って、和寿は即座に首を横に振った。
「とんでもない。遠慮しておくよ」
せっかく久しぶりに一緒に過ごせる週末なのに、この二人にとってお互いと一緒にいることは、一番大事なことではないようだ。
「それじゃ、あなたはここで森園さんとゆっくりして帰るの?」
幸世からそう言われて、和寿は目を丸くして幸世から佳音へと視線を移した。
いつも和寿がこの工房に来ていることを、まるで知っているかのような幸世の言葉に、佳音も息を呑んで固まってしまった。
「とんでもない。なに言ってるんだ、またからかってるんだろう?」
「アハハハハ!あなたこそ、なに焦ってるの?おかしい」
幸世は屈託なく笑いながら、玄関へと向かった。それに伴って、和寿も席を立つ。
「それじゃ、森園さん。この後は本縫いになるのね?」
幸世と和寿のやり取りを側で聞いていた佳音は、不意に仕事のことを話しかけられて、自分を取り戻した。
「はい。これから細かい修正をして、本縫いになります。 幸世さんに選んでもらった生地を使えば、もっと素敵なドレスになりますよ」