恋は死なない。
だからもう、これ以上、和寿への想いを募らせてはいけない。
自分のこの恋は、存在してはいけないもの。
自覚してしまった想いを消してしまうのは、とても辛いことだから、せめて自分の胸だけにしまって、切ない思い出のひとつにすればいい。
目を閉じた佳音のまぶたの裏に、夢を語ってくれた和寿の笑顔が浮かぶ。
「……好きです。……だけど」
その和寿に語りかけながら、佳音は握った両手の拳を額に押し当てた。震える唇を噛むと、涙が雫となって、テーブルの上に幾粒も落ちた。
――……もう古川さんとは会わない。
それが、自分自身の幸せを模索する今の佳音にとって、ただひとつの選択肢だった。