オフィス・ラブ #0
「メディアも製品チームも、2年以上やったし、そろそろ、どう」
昇進試験。
軽く課長に言われたのは、試験まであと2週間もない、ある秋の日だった。
ありがたい話だ。
だけど、もう少し、早く言ってほしい。
話に聞いていたとおり、過去問やその年の傾向と対策など、本当に「試験」だ。
論文も、一発で書くのは危険なので、部課長が下書きの添削をしてくれる。
学生時代に戻ったような感覚。
違うのは、通常の仕事をこなしつつ、残った時間でそれをしなければならないこと。
0時をとっくに回った頃、会社を出て、近くの駐車場へ向かう。
最近は、終電で帰れそうもない日が続くので、車で出てくるようにしていた。
すべりのいいシートに身体を預けて、エンジンをかける。
心地よい低音。
ゆっくりと煙草を1本吸いきってから発進させた。