オフィス・ラブ #0
部屋はもう暗かった。
一緒に暮らして一年近くになる相手は、すでに寝ているらしい。
最近こんなすれ違いばかりで、そういえばろくに顔も見ていない。
寝室に入り、起こさないようにデスクのスタンドをつける。
気配で目が覚めたのか、ベッドの上の彼女が身じろぎをした。
友人と飲んだ時、同じ席にいたのがきっかけでつきあい、半年ほどたった後、ふたりでこのマンションに越した。
どちらかといえば派手な外見に似合わず家庭的で、衣食住のうち、食と住が極端に適当な新庄を、かいがいしく世話してくれていた。
ひとつ年上だから、彼女はもう29になる。
結婚をまったく視野に入れずに同棲するほど、自分だっていい加減ではない。
けれど、このところ急速に関係が遠ざかっているのを感じていた。
自分なりに、大事にしてきたつもりだったけれど。
まだ何か、足りないのか。
壁のほうを向いて寝ている耳に軽く口づけると、自分も寝ようと、服を脱ぎはじめた。