オフィス・ラブ #0
「彼と暮らすことになってるの」
ことになってるのか。
いつの間に。
いったい誰が当事者なのか、よくわからなくなってきた。
「そうか」
他に言うべきこともない気がして、寝室でスーツを脱ぐ。
ベッドに寝る気はせず、この数週間はリビングで寝ていた。
あれが初めてだから、と彼女は言うが、どうだか、とも思うし、そもそも回数の問題でもない。
「怒ってくれなかったね」
着替える新庄をじっと見ていた彼女が、そうつぶやいた。
もしや、ここでも自分は加害者なんだろうか。
「そうでもない」
「怒ったの?」
そうでもない、と答えると、彼女は苛立ったように頭を振って、新庄の裸の腕に手をかけた。
「今週、出てくね」
そうか、と言おうとした唇をふさがれる。
首に腕を回して、たっぷりと口づけてくる懐かしい感触に、新庄も首を傾けて応じると、なぜか突き飛ばされて、顔を張られた。