オフィス・ラブ #0
「ほんと、無神経」
女の力とはいえ、油断していたところをまともに引っぱたかれると、そこそこ痛い。
痛みと衝撃とで何も言えずにいると、足音も荒く彼女は部屋を出ていった。
殴られるようなことをしただろうか、と首をひねりつつも、実際、殴られたんだから、何かしたんだろう、と思う。
彼女の怒りは、なんとなくわかる。
たぶん、責めてほしいんだろう。
だけど、何をどこから責めていいのか、こっちだってさっぱりわからないのだ。
どうして、この上自分に、何かを求めてくるのか。
なぜ、あっちが傷ついたような顔をしているのか。
ふたりで過ごすのが、何よりも楽しかった時期もあった。
それなりに、同じ未来を見ることができたからこそ、一緒に住む決心をした。
それでも、結局はこうなるのか。
新庄は、小さく息をついた。