オフィス・ラブ #0
「新庄さん」
配置換えの影響のあった何人かと席を移動させていると、大塚が寄ってくる。
「部課長とメディアチームとで、歓迎会をしたいんです」
空いてる日を教えてください、と言われ、今週ならどこでも、と答える。
「お店のリクエストは、ありますか」
「いや、特にない」
立場上必要になった書類箱を机に置いて、これ邪魔だな、と考えながら言うと。
「じゃあ、煙草だけですね」
そう、彼女がにこりと笑った。
思わず手をとめて、そちらを見る。
ああ、この子は。
必要だけど、なかなか後からは手に入らないものを、ちゃんと、もう持っている。
それを伸ばしてやりたい。
活かせる仕事を与えてやりたい。
自分は、何ができるだろう。
何を見せてやれるだろう。
彼女は、どんなふうに育つだろう。