オフィス・ラブ #0


「新庄さん」



配置換えの影響のあった何人かと席を移動させていると、大塚が寄ってくる。



「部課長とメディアチームとで、歓迎会をしたいんです」



空いてる日を教えてください、と言われ、今週ならどこでも、と答える。



「お店のリクエストは、ありますか」

「いや、特にない」



立場上必要になった書類箱を机に置いて、これ邪魔だな、と考えながら言うと。



「じゃあ、煙草だけですね」



そう、彼女がにこりと笑った。

思わず手をとめて、そちらを見る。



ああ、この子は。

必要だけど、なかなか後からは手に入らないものを、ちゃんと、もう持っている。


それを伸ばしてやりたい。

活かせる仕事を与えてやりたい。


自分は、何ができるだろう。

何を見せてやれるだろう。



彼女は、どんなふうに育つだろう。



< 24 / 31 >

この作品をシェア

pagetop