オフィス・ラブ #0
彼女は一度瞬きをすると、さっと受話器に手を伸ばす。

短縮番号を押す間に、今何が起こっているのか早口で説明した。



「当面、あのタレントの入った素材は使えない。雑誌の場合、原稿の差しかえが発生する」



受話器を耳にあてて、横目でこちらを確認しながら、彼女がうなずく。



「入稿済みのも、可能な限り替える。該当する雑誌をリストアップして、どの原稿と差しかえるかクライアントに訊いて」



手元に開いてあった書類に、言ったことを彼女が走り書く。

そこで電話がつながったらしく、説明を始めた。


落ち着いている。

話す内容も、しっかりしている。


関根の教育がいいおかげもあるだろうけれど、おそらく、飲みこみの早い子だ。

もう問題はないだろうと、新庄は自分の席に戻った。

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