瞳の中で誰よりも

本音を隠しに隠した建前に、それがただの見栄だと、嘘だと、外面だと気づく人が私は苦手だ。

かき乱される。怖くなる。



「夕紀さん」



なのに、なんで私はこの人に近づきたいと思うんだろう。

話をしたいと思うんだろう。


私の呼びかけに夕紀さんはゆっくりと顔を上げた。

少し長めの前髪が揺れる。


「夕紀さんは、彼女さんのこと、好きですか?」


知りたくなる。

なんでもいいからなにかを知りたくなる。


どんな内容でもいいから。なにかを。


「うん、好きだよ、大切」


優しく微笑む夕紀さん。

少しだけ痛む胸。


余計に分からなくなった。

好きってなんだろう。

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