瞳の中で誰よりも

車から降りてバイト先の裏口に行くと丁度夕紀さんがゴミ袋を持って出てくるところだった。

夕紀さんはついこの前から社員になったばかり。

社員用の真っ黒のシャツは、とても夕紀さんに似合う。


「おはようございます。手伝いますよ」

小走りで近づくと夕紀さんはまたいつもの優しい笑顔で笑った。

「おー、ありがと。じゃあこっちの軽い方お願いしていい?」

そう言って差し出されたゴミ袋を素直に受け取って一緒にゴミ置場へと足を向けた。

少し離れた場所にあるその場所に行くまでの会話を一切考えていなかった。

とりあえず話題を振ろう。

なんだろう、なにを言えばいいんだろう。

< 7 / 17 >

この作品をシェア

pagetop