君と出会えた奇跡



「……き。」

玲くんが振り返る。

「唯?」

「玲くんが、苦しいくらいに好きっ!

玲くんに抱きしめてもらわないと、涙も止まんないしっ!

玲くんの隣にいないと、笑えないしっ!

玲くんがいたからこそ、私は、声が取り戻せた。

今頃気づいてごめんなさい。

子供がいるのに。ごめんなさい。

だけど、

誰よりもっ!
玲くんが大好きっ!

玲くんは、私にとって、守りたい存在なんだよっ、」

叫ぶ声。

今日久々に出た声だというのに、
無理しすぎて喉が痛い。

けど、

ボロボロ溢れる涙、

歪む視界の向こうに見えたのは、

玲君が、顔をおおって、

涙を流す、姿だった。


「ごめんなさい、迷惑、だったよね、

スマホも返すね、

お兄ちゃんのところに行くから、安心して。」


と、後ろを振り返り、

走り出そうとした時、

愛しい人の温もりに包まれた。

お腹に回る、腕。

私は、泣きながら、その腕を抱きしめた。


< 208 / 382 >

この作品をシェア

pagetop