弱虫ワタシと俺様カレ【完】
「清太…お前何言ってんのかわかってんのか?」
「もちろんです」
俺は淡々とした口調でそういった。
もちろんねーちゃんを取られるのは嫌だ。でも、ねーちゃんを安心させるにはこれしかない。
それと…田崎先輩を元気づける為にも
こうする以外ない。
「俺ら…ライバルなのにいいのか…?」
「良い訳ないじゃないですか。でも!田崎先輩もずっと暗いじゃん!」
「清太…」
「俺の…大事な人が2人も暗いと嫌なんっすよ!」
「…わかった。沙乃にちゃんと告白して振られるわ」
「先輩ならオッケイされそうですよ」
「あんなことしたから尚更振られるわ」
田崎先輩は苦笑して俺をみた。
その瞳は笑ってても瞳の奥は不安げでどこか暗く計り知れない闇を感じさせた。
「田崎先輩」
「蓮斗」
「…え?」
「蓮斗って呼べよ」
「蓮斗先輩」
「なんだ?」
「俺…蓮斗先輩にならねーちゃん、あげてもいいっすよ」
「…は?お前は俺のライバルだろ?」
「本当の姉弟じゃないからといえ俺とねーちゃんは “ 姉弟 ” に変わりはないから…恋人にはなれないんですよ…。」
喉の奥がザラザラした。必死に堪えるがどうしても唇が震えた。
「清太…お前…。」
俺の手には大粒の涙が降ってきた。
「くそっ…!くっ…この…!」
「清太、お前良い奴だな」
「!?」
「俺も清太みたいな奴になりてぇ」
そう言う蓮斗先輩の表情はどこか悲しげで今にも崩れそうなほど儚い表情だった。
「俺、告白する。」
「…応援してますよ」
「俺さ清太の兄貴になりてぇ」
「何言ってるんすか!?」
「だから…沙乃を絶対俺のものにする」
そう言って空を見る蓮斗先輩はさっきのような迷いは何処にもなく、
真っ直ぐ前を見ていた。