お嬢様はじめました。
玲に手を引かれ、私は立ち上がった。



「帰ろう」

「え? 撮影は?」

「終わった」

「松本さんに帰る事言った?」

「知ってるでしょ」



え…そんな適当な……。


まぁ、今回に限った事じゃないだろう。



「ミーちゃん、連絡するね」

「うん、私も連絡する。 今度お茶でもしよ」

「うん!」



玲に手を引かれたまま廊下を歩いてるけど、さっきから玲は何も話さない。


私から話題を振るべき?


それよりなんか怒ってる?


いつも通りの無表情なんだけど、オーラ?がピリピリしてるような……。



「ごめんね?」

「何が?」

「何も言わずにうろちょろしちゃって……」

「あぁ、その事。 心配はしたけど怒ってないよ」



え?


そうなの?


じゃあ何で少し不機嫌なの?


言ってほしい。



「俺は葵の事何も知らない」

「……へ?」

「泣くような過去があったの?」

「…………」



そっか。


玲とはそういう話しした事ない。


私たちはお互いの事を何も知らない。


出会って間もないから知らないのは無理もない。


それでも玲も気にしてくれてたのかと思うと嬉しかった。




< 127 / 194 >

この作品をシェア

pagetop