お嬢様はじめました。
またまた2人きり。



「で? なに?」



こいつのこの態度。


お祖父ちゃんといた時と大違い。


二重人格?


猫かぶり?


裏表激し過ぎる。



「言わないで……」

「あ?」

「私が宝生院だって、玲には言わないで……」



海堂は嫌な笑みを見せた。


態度も表情も上から。


この人こそ私の中のお金持ちのイメージに近いかもしれない。



「お前玲に気があるだろ?」

「なっ__」

「見てれば直ぐわかる。 それなら宝生院の名前使った方が手っ取り早いんじゃねーの?」



確かにそうかもしれない。


お祖父ちゃんの孫だって言えば今より繋がりは強くなるだろう。


でもそんな繋がり欲しくない。



「あんたの言う通り、私は玲が好き。 だから言いたくない」



意味が分からないって顔をされた。


こんな人に理解して欲しいとは思わないけど、私の気持ちが少しでもいいから伝わればと思う。



「玲は今の仕事が好きだって言ってた。 自分が好き勝手できるのはお兄さんのおかげだとも言ってた」

「驚いた。 まさかあいつが俺たち以外にそんな話をするなんてな」

「私は玲を縛りたくない。 宝生院の名が玲の重荷になるなら、私は大石でいい」

「大石?」

「元の苗字。 両親が他界して、一人ぼっちになった私を疎遠になってたお祖父ちゃんが養子として迎え入れてくれた」



こんな奴にここまで話してやる義理なんてないのに、何ベラベラ喋っちゃってんだろ。




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