お嬢様はじめました。
真剣な表情の玲の顔が近づいてくる。


自然と瞼が落ちる。


唇に感じる柔らかな感触。


温もり。


離れたと思ったら抱きしめられた。



「葵と出会って初めてな事ばかりだよ」

「ははっ、私も」

「それに落ち着く」

「私も」



ギュッと抱きしめ返した。


同じ気持ちを共有できて嬉しい。


これからも色んなことを共有していきたい。


終わりがくるその時まで……。


玲に家まで送ってもらい、リビングで一息ついた。


宝生院家に送ってもらうわけにはいかず、元々住んでいたマンションに帰ってきた。


たくさんの人に囲まれた生活に慣れてしまったのか、凄く寂しく感じた。


でも過ごし慣れた匂いにどこかホッとした。


おばあちゃん、お父さん、お母さん、みんながいたらもっと楽しかったんだろうな。


樹希や華の事も紹介したかった。


実現できない事ばかりを考えてしまう。


シャワー浴びて今日はもう寝よう。





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