お嬢様はじめました。
突然の海堂の大きな声に、飲み物を持ってきてくれた男性が驚いた顔をした。


だけど直ぐに表情は整い、丁寧に飲み物を置いてくれた。



「いつからだよ?」

「花火大会の時から」

「恥ずかしげもなくキスしてたもんな」

「ぶっ__!?」

「おまっ__きたねぇんだよ!」



思わずカフェラテを吹き出した。


慌てておしぼりで口元を拭った。


盛大に噴きださなくてよかった。



「見てたの!?」

「好きで見たんじゃねーし」



そうかもしれないけど!


そういうのは見なかった事にするのが礼儀なんじゃないの!?



「お前ちゃんと別れられんのかよ?」

「……どうだろ。 まだ別れるときの事なんて考えられない」

「ま、いざとなれば正体バラせばいいんじゃねーの?」

「本当性格悪いよね。 それができればあんたの婚約者になんてなってないから」



海堂は嫌味たっぷりな笑顔を見せた。


全身から溢れ出す自信と相まって、ムカつき度が増す。



「早く好きな人見つけなよ」

「そんなんいらねーよ」

「何でよ? 好きな人と結婚した方が幸せでしょ?」



コーヒーカップを置いた海堂は「ははっ」とバカにした笑を漏らした。





< 176 / 194 >

この作品をシェア

pagetop