お嬢様はじめました。
「またな。」

「…………。」



やっぱり文句の一つでも言ってやろうと口を開きかけると、先に口を開いたのは玲の方だった。


玲は私に背を向けると歩いてそのまま出て行ってしまった。


スッと伸びた背筋にしなやかな足取り。


不覚にも後姿にさえ見惚れてしまった。


それにずるい……ずっと涼しい顔してたくせに最後に笑うなんて……。


あんな事されたのに、たったそれだけの事で私は何も言えなくなってしまった。


美形は得だ。


ってかちょっと待って!!


こんなムードもへったくれもない中私のファーストキス終わっちゃったの!?


しかも彼氏でも何でもない奴と!?



「嘘でしょ? 誰か嘘だって言って……マジありえなぁぁぁぁいっ!!!!」



ショックのあまり愕然となった私は暫くの間その場に立ち尽くした。
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