冴えない彼は私の許婚
あの冴えない彼?
朝、目を覚ますと熱でも出てないかと額に手をやる。
「熱なんか出るわけ無いか…」と、分かっていた事とは言え、私は深い溜息を一つついて諦める事にした。
これが私の運命なんだわ…
そして、朝食を済ませると、お祖母様の部屋へと向かう。
「お祖母様おはようございます。 今日は宜しくお願いします」と手をついて頭をさげる。
「碧海、お着物はそちらに用意してある物を着なさい」と言った、お祖母様の隣の続き間の部屋の衣桁(いこう)に、新しい着物が掛けてあった。
あまりの素敵な着物に見惚れていると、
「碧海の為に作らせたものですよ?」とお祖母様が言う。
「わぁ素敵な色じゃない?」と後ろから声がする。
振り向くと眠そうな朱音が立っていた。
「お姉様にピッタリな色ね?」
碧い地に白い竹がすっと伸びた着物だった。
本当素敵なお着物だわ…
でも、気持ちは上がらない。