冴えない彼は私の許婚
キョウハル?

 食事を済ませて恭之助さんのマンションに帰って来た。
玄関を入ると恭之助さんは待てないとばかりに玄関で激しいキスをする。
着物の裾を開けると襦袢の上から太ももを弄る。
そして襦袢をも捲くり上げ太ももにキスをする。

「ぁ……きょ恭之助さん…ここじゃ…」

「あぁ着物が汚れるな?」

寝室に入ると帯締めを外し…帯揚げを緩めると帯が解ける。
互いに着物を脱ぐとベットに入り愛し合う。

「碧海、来月初めのに葉瀬流の生け花展がある。門下生にそこで碧海を紹介するいいな?」

「…うん……」

「どうした?」

「恭之助さんはこれからどうするの?」

恭之助さんは葉瀬流の後継ぎ、仕事を辞めるのだろうか?
私はどうするのだろう…
自分の作ったものが商品化される事になった今仕事を辞めれるのだろうか?
そして私も家の事を考えないといけない。

「どうするって?何を?」

「葉瀬流と仕事、考えなくちゃいけないでしょ?」

「あぁそうだな…今はまだじぃ様も元気だし親父も居るがいつかは考えないといけないけど、今は仕事のほうが楽しいから辞める事は考えられないな。碧海もそうだろ?」

「うん……」

「あんなに良い物を作れるようになったんだ、今辞めたら勿体無い。碧海には続けて欲しい」

「仕事続けてもいいのかな?…」

「まぁ一度うちのじぃ様と碧海のばぁ様とは話しなくちゃいけないだろうけどな?」

次の日第一開発部5人で近くの居酒屋で私のお祝いをしてくれた。

「えっー……」玲美ちゃんは驚いて言葉にならないらしい。

昨日、恭之助さんと2人でクレラントホテルに入って行くところを玲美ちゃんに見られたらしく、一緒に居たイケメンが誰という話になって仕方なく恭之助さんだと話したら驚いてしまったのだ。
そして恭之助さんもバレてしまったならとメガネを外し素顔の恭之助さんを見せる。
木ノ下君が私達の事を初めから知っていた事や九龍さんも知っていたと聞いた時玲美ちゃんは自分だけが知らなかった事が悔しかったのか木ノ下君に八つ当たりしていた。
でも九龍さんが知っていた事は私も驚いた。

「九龍さんいつから私達の事に気がついていたんですか?」

「いつから?っか、葉瀬が差咲良を好きなのを知ったのは随分まえだな!お前たちが付き合い始めたのを知ったのは火曜日のプレゼンの資料を見た時だ」

「プレゼンの資料?」と私は首を傾げる。

「あぁ、あんなデータを差咲良が自分で出すとは思わないからな?」

あぁなるほどそれでプレゼンの時あんな事言ったんだ。

「まぁうちの部署は男が一途だからな恋が実ってよかったよ!だが、仕事は仕事で浮かれないでやってくれよ?次は秋の新商品を頼むぞ!今度は木ノ下や伊東も参加出来るように頑張ってくれよ!」

「はい!」

おひらきになった後恭之助さんの部屋に泊まり週末は箱根の別荘で過ごした。
妙子さんにパン作りを教えてもらい楽しい週末だった。
月曜日の朝からさっそく手作りのパンでサンドウィッチを作り恭之助さんの分も用意してお昼休みを楽しみにしていた。
もうすぐお昼休みと言う時に内線電話で私に面会の人が来ていると受付から連絡がありロビーに行ってみると朱音だった。

「朱音、どうしたの?」

「お姉様助けて!!」

朱音は顔色が悪く何かに怯えているようだ。
ロビーで話せる話じゃないようなので近くのカフェに行く事にした。
ロビーを出ると若い男が二人私達の前に立ちはだかった。
この人達一人は以前うちの前まで朱音を送ってきた人…?

「朱音ちゃん遊びに行こうよ!」

「嫌だって言ってるでしょう!もう付きまとわないでよ!」

「そんなこと言わないで遊ぼう?そっちのお姉さんも一緒に遊ぼうよ」と私達の腕を掴む。

「辞めて下さい、人呼びますよ!」私は睨みつけるが相手は気にもしない。

「おい!お前ら何してる?彼女達嫌がってるじゃないか?」と通りすがりの人が声を掛けてくれた。

長身で黒髪を後ろへ流し固め黒いメタルフレームの眼鏡の奥の瞳は鋭い目をしているスーツ姿の男性。

「何だお前?関係ない奴は引っ込んでろよ!」と威嚇する。

「誰が関係ないって?おめぇーら誰の女に手出してるんだ?」

もう一人聞き覚えのある声がした。
振り返るとメガネを外し鬼の形相の恭之助さんだった。

「その汚い手をどけろ❢」と男の手を払い除けてくれた。

「おぅ恭之助!この子達お前の知り合いか?」とスーツ姿の人が聞く。

「あぁ春樹久しぶりだな?」と恭之助さんが言う。

「おい、まずい!キョウハルだ諦めろ!」と立ちはだかっていた一人が言うともう1人は「チッ」と舌打ちをして去って行った。

「碧海、大丈夫か?」と恭之助さんが声をかけてくれた途端足の力が抜けて崩れそうになったところを恭之助さんに支えられた。

「恭之助さん…有難う」

「お姉様ごめんなさい…」

朱音も怖かったのだろう手が震えてる。

「少し休もうか?」とスーツ姿の人が言い私達はカフェに入る事にした。

「で、どういう事?」と恭之助さんが心配して聞く。

「あの人達クラブで知り合った人で付き合えってひつこくって…一度友達と泊めて貰った時に家まで送ってもらってるから家も知られてて…お姉様にまで怖い思いさせてごめんなさい…」朱音は涙を流して謝ってくれた。

「朱音ちゃん軽率な行動がどうなるか良く分かったよね?金輪際クラブには行かないようにいいね!!」

恭之助さんは少しきつい言い方をした。
朱音の事を心配してくれて敢えてきつく言ってくれたのだと思う。

「はい…」

「恭之助、家まで知られてるのは不味いな?!」スーツの人が言うと

「そうだな…ちょっと脅しとくか…?」と恭之助さんは呟く。

え?脅しとく?恭之助さん?
さっき助けてくれた時といい今の恭之助はなんだか怖い…
恭之助さんじゃないみたい…

「あの…恭之助さん?こちらの方は?」

「あっこいつ春樹、大学時代からの友達で、木ノ下の兄貴」

「えっ?木ノ下君の?」私は立ち上がり「木ノ下君にはいつもお世話になってます。また今日は助けて頂いて有難うございました」と頭をさげる。

「いえいえ、一郎太の方こそお世話になってます」と微笑む。

「二人共挨拶はそのくらいにしてさ朱音ちゃんあいつの名前と家分かる?」

「はい…」

恭之助さんは朱音からさっきの人の事を聞き出すと

「春樹おまえ時間あるか?」

「あぁ送ってくよ!」

「頼む!」

「何時に終わる?」

「6時には」

「じゃこの前で?」

「頼む!」

恭之助さんと春樹さんは互いに思っている事が分かるようで暗号のような会話をしている。

「碧海、戻るぞ!」と恭之助さんは立ち上がる。

「あっ朱音が…」朱音が心配で置いていけない。戻ったところで仕事なんて手につかない。

「大丈夫ですよ、僕が責任を持って送りますから」と春樹さんが言ってくれた。

「すいません、よろしくお願いします」と頭を下げ社へ戻る。









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