冴えない彼は私の許婚
私は木理子さんに見せてもらった写真を思い出しながら花を生ける。
こんな感じだったと思うけど…
「お祖母様お願いします…」
「…なかなかいい筋をしています。やはり碧海には向いている様ですね?
いっそうお稽古の曜日を増やしたらどうです?」
えっ!?
じょ、冗談じゃない!
「…特別に個人指導して頂いてるのに、これ以上先生にご迷惑をお掛けしては…」
「大丈夫ですよ? 私からお願いします。
当家との仲ですもの、あちらも快く承諾してくれますよ?」
私が大丈夫じゃないんだってば!
実はお花の先生というのは、会社の先輩であり、私の許嫁のあの葉瀬さんなのだ。葉瀬さんは花道葉瀬流の家元の孫で、時期家元になると言われてる。
私は許婚と聞いて、一度もお稽古には行っていない。ずっとお手伝いの木理子さんに、私の代わりにお稽古に行ってもらっているのだ。
「…あの…お祖母様? その許婚の事なんですが…」
「あぁそうでした。 今度の土曜日クレラントホテルで、両家でお食事をする事になってますから、宜しいですね?」
「………」
いえ、宜しく有りません!
両家でお食事…嘘でしょ…どうしよう?
結局お祖母様に断る事もできず、私は肩を落としてそのまま自分の部屋へと戻った。