冴えない彼は私の許婚

玲美ちゃんは、鼻息荒く向かいの席から体を乗り出しくるが、今はそれどころじゃない。

「んー私は好みじゃないから」

「そうなんですか?」

「玲美ちゃんは連絡したの? 名刺貰ってたでしょ?」

玲美ちゃんも、タクヤって人の友達から声掛けられていた。

「それなんですよ、それ! あの名刺、帰りに一郎太のバカが破ってタクシーの窓から捨てたんですよ! マジありえないっつうの!」

「アハハそうなんだ? 残念だったね?」

「で、先輩、タクヤって人の連絡先教えてくれません? そっちに連絡してみようと思って!」

「ごめん。捨てちゃった」

「えーマジですか? がっかり…」

本当はまだ捨ててない。
多分バックの中に入ってると思う。でも、あの肩を落としている木之下君見てたら、可哀想で持ってるなんて言えやしない。

多分、名刺を捨てた事玲美ちゃんに、こっ酷く怒られたんだろうな?
玲美ちゃんもがっかりって言ってる割には、全然がっかりしてる様に見えない。

玲美ちゃんが仕事に戻ると、また、ため息が出る。





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