『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
ろくに休みも取れないまま、週が変わろうとしていた。

祖母が一緒に住み始めてから、彼女は毎晩のように玄関マットの上で眠り込んでる。
どうしてなのか…と理由を聞くと、こんな答えが帰ってきた。


「おばあちゃんが起きてこられたら分かるようにです。狭い家なら直ぐに物音で気づくかもしれないけど、ここは部屋も沢山あるし、きっと迷うと思うから…。
入浴後もすぐには寝付けないみたいだし、起きてきた時あたしが居ないと不安だろうと思うので、あーして玄関で待ち構えてるんですけど、いつも先に寝込んでしまって…」


情けない話ですよね…と、笑う姿は朗かだ。
迷惑をかけられてるという意識は、彼女の中には感じられない。
全てを自然と受け入れてる。
少なくともこの時の俺には、そう思えていた。


「月曜日から一週間二人だけになるけど大丈夫?不安はない?」


元より自分がいるのは朝早くと夜中だけだ。睡眠時間を合わせても、7時間から8時間程度。

後はずっと二人きり。
その間の話は帰ってから聞くが、彼女はいつも祖母のことを褒めてばかりいる。

悪い話は一切しない。まるで、それが義務的な感じにも受け取れた。


「不安があるとしたらお買い物に行く時だけです。手荷物を持つのはあたしでいいんですけど、両手に持ってるとおばあちゃんに何かあった時、助けられません。
食材放りだして助けてもいいですか?怪我させるよりも卵が割れた方が買い直しができるから安心ですが…」


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