『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
他の兄姉たちの経歴も華々しい。
誰もが一流大学や女子大を出てる。

それに比べて、あたしはただの高卒出身。


この結婚は良縁どころじゃない。格差が大き過ぎる、『格差婚』だーーーー。



(叔母さん……あんまりだよ、これ……)



ノリ過ぎてしまった…と反省した。


この結婚はやめた方がいい。

あたしには、久城さんについていける自信がない。



彼とは、住む世界が違い過ぎるーーーー。



理想からも、想像からも、かけ離れ過ぎてるーーーー。




茫然とパソコン画面に見入ってたら、廊下の方から足音がした。
ガタガタ…という物音に気づいて、部屋から飛び出した。


和室から出てきたおばあちゃんがキッチンへと向かってる。

またしても料理を作ろうとしてる。
夜中だろうが朝方だろうが、思い立ったら作らずにはいられない。



………久城家のご両親が亡くなってたのは事実だった。
末っ子の彼がまだ5歳の頃に起きた不幸な飛行機墜落事故に同乗していたのだ。


ビスクドールを彼だと思うおばあちゃんの心理が分かった。
あたしはその事実を知って、改めておばあちゃんの行動の半分以上が理解できた。



(…この人は常にその事故が起きた頃の記憶に回帰してる。急に親無しになってしまった五人の孫を一手に引き受けたことが、一番印象強く残ってるんだ……)


咲子さんというのは、久城家で働いてた家政婦さんだというのも知った。
おばあちゃんを助け、一緒になって子育てを支援してくれた仲間…。

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