『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
パリの骨董市に連れて来られて3日が経った。

今回相手にしている顧客は女性。
久城とは昔から付き合いのある、三条家のお嬢様だ。



「お部屋中をユニコーンでいっぱいにしたいの!ユニコーンって、剛さんはこ存知?」


「……存じてますよ」


また始まったか…と思いながら話を聞いた。
このお嬢様には悪い癖があって、何かにこだわり始めると、直ぐにそれを買い集める。

ユニコーンの前は、「北欧のアンティーク製品」だった。
映画に感化されたとかで、わざわざフィンランドまで同行させられた。


(…大体このお嬢様は何歳だよ⁉︎ いい加減30歳近いんじゃないのか?)


呆れながらも頭の中に浮かぶのは、祖母の面倒を頼まずにはいられなかった女性のことだ。
日本を離れる前にかけた電話の中で、暗くなりそうだったこっちの気持ちを元気づけようと努めてた。


『お土産とか、特に気にしなくていいので…』


電話口の向こうで明るい声を出してた。

顔も見ずに部屋を出て行ってしまった心の狭さを許してもらえるのなら、どんないい値がしても土産くらい買おう。


……ただ、何を買ったら喜ぶのかが分からない。
一緒に住んでる筈なのに、そういう点ではまだ理解が進んでいなかった。


毎日、祖母の話ばかりをしてたんだな…と、しみじみ思った。
降って湧いたお荷物の世話で、自分も彼女も生活を乱されてる。


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